人生の中で、もっとも大きな楽しみを与えてくれる食事が、胃腸の不快感や吐き気、胃もたれ感などで辛く苦しいものになってしまう悲しみは、到底はかり知ることはできません。
しかもこの疾患は、胃腸が動くとき、つまり消化運動が始まったときに苦痛が出る運動性の疾患であることがほとんどであり、残念ながら内視鏡検査を実施しても胃潰瘍やがん、ポリープといった物理的異常が確認されないこともあります。
西洋薬が効果を示さないことも多く、多くの方が漢方薬を服用しています。
機能性ディスペプシアの病態は非常に複雑であり、運動性疾患であるため、原因を割り出すことが難しいとされています。西洋医学的には、消化管の運動機能異常、内臓知覚過敏、ストレスなどが原因で起こっているとされています。
食べ物が胃の中に入ってくると、胃体上部が弛緩して食べ物を受け入れて貯留し、消化してから少しずつ排出させる運動を協調的に行っています。
この機能は、交感神経と副交感神経のバランスで調節され、胃や腸管内の神経叢や平滑筋の働き、分泌機能などが複雑に絡み合って成り立っています。
機能性ディスペプシアでは、これらのどこかに障害が生じ、胃の運動異常・内臓知覚過敏・消化管と中枢神経系の連関障害などから生じていると考えられています。
機能性ディスペプシアを発症した方の中には、強い社会的ストレスを受けていた方も少なからずいらっしゃいます。
また胃の不調を訴えた人が、検査で物理的な異常がないとわかった途端に、症状がなくなることもあるようです。これらのことから、強いストレスや慢性的なストレスは、胃腸の機能に影響をおよぼすことがわかっています。
機能性ディスペプシアは中医学では胃脘痛・痞満といった病態として考えます。
機能性ディスペプシアの病態はいくつかありますが、実際の臨床では「脾胃の虚実」と「脾胃を疏泄する肝の失調程度」の2つのパラメーターを基本に、食滞や寒邪などの付帯因子を加味して、その人が抱える症状および体質から正しい漢方薬を選択することができれば、ほとんどのケースで症状が軽減もしくは消失します。
漢方を使う上で最も大切なことは、機能性ディスペプシアでは、その病態が非常に複雑であるため、杓子定規な漢方や病名漢方ではうまく対応することができないということです。
廣田漢方堂では、これまでたくさんの機能性ディスペプシアの相談を受けてきました。
当店の特徴は、その人特有の症状、胃腸の状態、なぜそのような症状が起こり始めたのか、そこからどのような経過を辿ってきたのかを時間をかけてじっくりとお伺いし、その状況が起こっている原因を西洋医学・中医学を融合させた中正医結合理論を土台に検討していくことにあります。
2000冊を優に超える専門書を所有し、10年以上真摯に漢方薬と向き合ってきた経験から、数種類の方剤を組み立てることで多少時間がかかることもありますが、相談に来られたほとんどの方が症状の軽減または消失を実感されています。
病院では、六君子湯や半夏瀉心湯、四逆散などの漢方薬が処方されることが多いようですが、それでは症状が改善しない人たちが廣田漢方堂にはたくさん相談に来られます。そして詳しく症状をお伺いすると、その病態が非常に複雑で1つの漢方薬だけでは間に合わず、保険医療にはない様々な漢方製剤を使用しなければならないことも少なくありません。
医療用漢方薬と薬局漢方を比較した場合、薬局漢方は使用できる方剤の数が医療用漢方に比べ、その種類が何倍多いという特徴を持っています。
その豊富な漢方薬の中から、あなたの現状にあった漢方薬を数種類組み合わせることで、ようやく機能性ディスペプシアを改善することができるようになるのです。
廣田漢方堂の漢方を服用することで、ほとんどの方が症状の軽減を実感し、それまでは苦痛に感じていた食事を再び楽しむことができるようになっています。
当店の漢方はエキス剤ですので、服用も簡単です。
機能性ディスペプシアでお悩みの方で、なかなか改善がみられない方は是非ご相談ください。
初回
現在、日本全国から機能性ディスペプシアのご相談をいただいておりますが、初回は必ず当店に足を運んでいただく必要があります。
その際に機能性ディスペプシアになった経過、現在の状態、その他の体質や体調について詳しくお話をお伺いすることで、適切な漢方療法を行うことができるようになります。
※ 当店代表である廣田の漢方相談を希望される場合に限り、初回相談料4000円を漢方代とは別に頂戴しておりますのでご了承ください。
2回目以降
近隣の方は、直接来店していただき、漢方を服用しての変化を確認させていただきます。
遠方の方の場合には、2回目以降、電話相談に切り替えることが可能です。
① 50代 男性(大阪市)
1年半ほど前から舌の痺れを感じるようになった直後から、胃もたれ・食欲減退・ゲップ・身体の気だるさが出現しはじめたとのことでした。
舌の痺れが日に日に強くなったため、病院にてあらゆる検査をするもどこにも異常はありませんでした。
その後、しばらくして舌の痺れは自然に緩解したものの、胃腸症状は全く改善されず、最終的に機能性ディスペプシアと診断されました。
機能性ディスペプシアを治療するために、アコファイドをはじめに西洋薬を使用するもほとんど効果はありませんでした。そのため、西洋医学的な治療をあきらめ、漢方専門クリニックにて漢方による治療を試みられていました。数か月にわたり漢方薬を服用するも効果なく、ネットで調べて当店のことを知り、相談に訪れたとのことでした。
漢方クリニックにて処方されていた漢方薬は茯苓飲合半夏厚朴湯で、医師は胃もたれを気滞・水滞として考えていたようですが、舌診にて相談者の舌を確認したところ、舌一面に深い裂紋があると同時に茸状乳頭の消失、無苔であり、著しい気陰両虚であることが理解できました。
機能性ディスペプシアで胃もたれ等がある場合、滋陰薬の筆頭である地黄を使うかどうかは非常に迷うところですが、このように舌診にて明らかに気陰両虚がある場合には、使用可能かをまずテストすることが大事です。
機能性ディスペプシアの場合、相談者の主訴から、病態を把握するのは非常に難しい部分があります。なぜならほとんどの人が同じような症状を訴えられますが、病因は多岐にわたり、問診だけでは的を絞ることができないためです。
そのため、内臓の肉の栄養状態・血流状態・筋トーヌスなどを可視下で観察できる舌診は非常に有力な手掛かりとなります。
こちらの方の場合は、舌診から脾胃の気陰両虚がベースにあると考えたが複数の方剤を組み合わせて用いてしまうと服用量が増えてしまうため、反って胃に堪えるのではないかという懸念がありました。
そこで単一方剤で脾の気陰両虚(陰虚は地黄が必要なくらい深刻)をカバーできる方剤を選ぶ必要があるとして、人参養栄湯を処方しました。
そこに胃腸の血流を改善し、消化が少しでもスムーズにいくように三稜・莪朮製剤を加味して様子を見ることにしました。
この処方を少量から始め、問題がないことを確認した上で徐々に分量を増やし、服用すること1か月。
1年以上も続いた症状は、胃もたれ等のほとんど消失。舌診でも茸状乳頭が徐々に復活し、舌苔も生えてきているため、気陰両虚はうまく補えていると判断しています。
② 30代 女性(青森県)
今年の2月に大きなストレスがあり、そこから胃重感・胃もたれ・胃痛が食後に酷くなり、食事がまともに摂れなくなってしまったとのことでした。
もともとストレスがあると胃に来るタイプだということで、3月にはクリニックにて機能性ディスペプシアと診断され、医師から胃薬を処方され、服用するも、ほとんど効果はありませんでした。
詳しく話を伺うと、どうやらこの女性の機能性ディスペプシアは胃腸の痙攣性疼痛とそれに伴う蠕動不利が主な要因であると推測されました。
そこでそれらの症状を改善すべく、柴胡桂枝湯に加味平胃散を併用し、ストレスによって自律神経のバランスを崩して痙攣性疼痛と消化不良を起こした状態と、消化不良に伴う食滞を改善することにしました。
これらの漢方を使っているうちに徐々に症状は軽減し、漢方服用開始後1か月弱で、ほとんど症状は消失しました。
今では食事をしっかり摂っても以前のような症状が出ることはなく、食べ過ぎたときに胃もたれ感が少し出たり、たまに腸の痙攣性疼痛を感じるくらいになっているとのことです。
一般的には症状が改善してきたら、徐々に服用回数を減量し、漢方を中止していきますが、この女性の場合には、ストレスが慢性的にかかっているため、予防目的で服用を続けています。
③ 20代 男性(兵庫県)
数年前に激しいめまいに襲われ、それが治ったと思ったら胃腸の調子を大きく崩しはじめ、機能性ディスペプシアと診断されたとのことでした。
数年がかりで治療した結果、今ではほとんど不快な症状を感じることはなくなったとのことですが、たまに胃腸に殴られたような激痛が起こること、それに食後に胃もたれ感が若干残るのを治したいと考え、当店に相談に来られました。
殴られたような激痛は、いきなり起こってくるとのことだったが、病歴を確認し、めまい→機能性ディスペプシアの流れは自律神経系のアンバランスによって交感神経と副交感神経の連携がうまくいかず、胃腸の筋肉が激しく痙攣したりすることによって生じると推測しました。
舌では、白膩苔に脹舌で紅刺が舌全体に広がっていること、平素から便秘傾向であることから、肝鬱気滞・陽明熱盛・血熱と考え、大柴胡湯と大黄牡丹皮湯で対応しました。
そうしたところ、大柴胡湯で交感神経の緊張を緩ませすぎたのか、身体のだるさが出てきたということで、服用量を2/3に減量し、大黄牡丹皮湯はそのまま継続服用するように用量調節を行ったところ、それが功を奏し、一連の胃腸系不快症状はほとんど出なくなったとのことでした。
④ 20代 女性(大阪府)
胃重感・胃のむかつき・胃が動いていない感覚・胸焼けなど多彩な症状があり、症状発症のきっかけは約1か月に及ぶ暴飲暴食だったとのことでした。
胃腸科にて様々な薬を服用するが、全く効果なく、機能性ディスペプシアと診断され、数年が経過していました。
機能性ディスペプシアには虚証・実証・寒証・熱証など様々なタイプがあり、病名漢方では対処することができないという印象があります。また単一方剤でいけるパターンもあれば、複数方剤を上手に組み合わせなければいけないパターンもあるので、その時々の状況に合わせて弁証論治を行う必要があります。
舌診では、舌全体が異様に赤く、紅絳舌を呈しており、臓熱のために舌苔を生やす陰を供給できず、無苔傾向・乾燥傾向にあるように思えました。また舌先の赤みは非常にきつく胃熱がベースにあって、燥屎を形成すると同時に、胃絡脈絶して熱の逃げどころがなくなり、血熱を生じて胃腸の性情な動きを失ったものと推測しました。
そしてこの状態から浮かんできたのが、『神農本草経』、いわゆる『本経』の麦門冬の項目に記載されている「心腹結気。傷中傷飽。胃絡脈絶」という文言でした。
これを胃熱により脈絡が心肺と通じずに食べ物が栄養にならない=消化運動が起こらないという状況に陥ると解釈すれば、これはまさしく機能性ディスペプシアと酷似していると考えてもよいかと思います。
これまでの経験では、機能性ディスペプシアは極端に胃腸が弱い人、またそうではない人が、自分の許容範囲を超える飲食物を過量に摂取した結果、急激な胃腸障害を引き起こしているケースが非常に多くあります。
今回の症例では、昔からの便秘傾向・紅絳舌から「胃熱・燥屎・血熱」と考え、大黄牡丹皮湯・大青葉・甘露飲などをベースに処方を組み立てました。
約2週間の服用で各症状は10→6となり、少しずつ状態が良くなっていることから、そのまま漢方を継続して様子を見ることにした。舌診では紅絳舌が紅舌となり、舌苔が少し生えていることが確認できました。
最終的に同処方を2か月継続することで、胃腸症状は全く消失し、無事に漢方を卒業できた。
⑤ 30代 女性(大阪府)
食事を食べた後の胃腸の不快感が病院の薬では一切改善せず、全国津々浦々の漢方薬局を渡り歩いて当店にたどり着いたとのことでした。
当店では症状と舌診から、痰熱および瘀血によって胃腸が動かないと判断。さらに脂ものや濃いものを摂るとてきめんに症状が悪化することから胆汁分泌不利があるとしました。
そこで清熱化痰薬と活血薬、胆汁分泌促進薬を使用したところ、症状は8割方消失しました。
食べてもあまり症状を感じることはなくなったということでした。
しかしながらもう一歩、症状が改善しきらないということで、さんざん悩んだ挙句、使用している活血薬の中の駆瘀血の効力が弱く、それによって胃腸に十分な血液が循環しないために、胃腸がしっかりと動けないのではないかと考え、いつも使用している活血薬にもう1種類の活血薬を加味することにしました。
すると…
飲みはじめてから1週間もしないうちに胃腸の調子がこれまでよりもさらに良くなり、朝は食欲がわかず、どうしても食べられなかったのが、1日3食、きちんと食べられるようになり、現在ではほとんど胃腸症状を気にすることがなくなっています。